セッション3 生物多様性分野での企業とのパートナーシップ
◎「サンフェルナンド市における企業とのパートナーシップの事例について」(イクレイ東南アジア事務局、プロジェクト・オフィサー レア・ローズ・ビクトリア)
サンフェルナンド市の企業とのパートナーシップは、91年に山が噴火して環境対応が求められたことが契機となった。復興の経緯には、企業、市民等多くのセクターからの参加があり、行政としても複数のセクターを行政に巻き込みながら環境の課題に取り組む枠組みを作る必要が出てきた。そこで市は複数のセクターから成る協議会を作った。この協議会を通じて自治体と企業のパートナーシップを促す同協議会は、すでに7年の実績があり、34の多面的な民間組織を巻き込みながら戦略策定をするなど、成功を収めている。この枠組みの中で、市は資金面での自主性を持ち、国からの交付金への依存度を低くする必要性を認識している。そこで市は協議会での企業との連携を通じて資金集めを行い、現在ではインフラ投資に20億ペソを調達するまでになっている。その他にも協議会は、市の土地利用を円滑に進めるなど重要な役割を果たしている。
市の主なイニシアティブの一つに都市緑化があり、環境管理プロジェクトとして、運河建築、大気モニタリングなどを行っている。ここでも協議会が一役買っており、主な取り組みとしては市内のメイン通りを美化するプロジェクトがある。中央分離帯に植樹し、基幹道路の交通問題にも対処している。協議会のメンバーである民間組織から資金提供が行われているほか、プロジェクト立案に関わるスキルの提供も民間組織からなされている。枠組みと実施は行政、資金とスキル提供は企業というシステムが確立しており、プロジェクトは成功と認識されている。
サンフェルナンド市の企業とのパートナーシップは、91年に山が噴火して環境対応が求められたことが契機となった。復興の経緯には、企業、市民等多くのセクターからの参加があり、行政としても複数のセクターを行政に巻き込みながら環境の課題に取り組む枠組みを作る必要が出てきた。そこで市は複数のセクターから成る協議会を作った。この協議会を通じて自治体と企業のパートナーシップを促す同協議会は、すでに7年の実績があり、34の多面的な民間組織を巻き込みながら戦略策定をするなど、成功を収めている。この枠組みの中で、市は資金面での自主性を持ち、国からの交付金への依存度を低くする必要性を認識している。そこで市は協議会での企業との連携を通じて資金集めを行い、現在ではインフラ投資に20億ペソを調達するまでになっている。その他にも協議会は、市の土地利用を円滑に進めるなど重要な役割を果たしている。
市の主なイニシアティブの一つに都市緑化があり、環境管理プロジェクトとして、運河建築、大気モニタリングなどを行っている。ここでも協議会が一役買っており、主な取り組みとしては市内のメイン通りを美化するプロジェクトがある。中央分離帯に植樹し、基幹道路の交通問題にも対処している。協議会のメンバーである民間組織から資金提供が行われているほか、プロジェクト立案に関わるスキルの提供も民間組織からなされている。枠組みと実施は行政、資金とスキル提供は企業というシステムが確立しており、プロジェクトは成功と認識されている。
◎「自由貿易地域と環境にやさしい地域としてのバタム」(イクレイ東南アジア事務局、プロジェクト・オフィサー レア・ローズ・ビクトリア)
インドネシアでは、新たな法制化により天然資源関連の分野でビジネスを行う企業がCSRを行う必要がある。CSRの好例を2例紹介。1つ目は民間主導、2つ目は自治体主導だ。
1例目はパンカルピナン市の植物園の事例。州都である同市は、すずなどの天然資源が豊富で、5%の経済成長を続けている。だが、すずの採掘が貪欲に行われ、土壌汚染により植物の生育が悪くなったり、生物多様性が破壊される等の現象が起きている。そこで企業がCSRプロジェクトを開始。当初は世論の圧力によるものだったが、その後自治体の支援を得て活動が加速。最終的には、汚染された土地を植物園に転換して観光業にも寄与した。現在植物園には2000超の植物相、200超の動物相がいると見られている。その後、植物園と自治体で正式に覚書を交わし、プロジェクトが地に足をつけて推進している。これは企業が初めてCSR予算を環境プロジェクトに割り当てて、大成功を収めた国内でも画期的な一例である。
2例目は、バタム市の例。バタム市はその戦略的立地により、産業、観光、船舶貨物の港湾として発展してきた。市は、企業のCSR計画の中で持続可能な緑化で企業と自治体のパートナーシップの枠組みを作り、その中で、企業には緑ある快適な町づくりに参加する機会が提供されている。例えば、植物園のような公園を作ったり、その環境を改善したりする計画がある。このプログラムは現在計画段階で実際に正式な覚書等は締結されておらず、優先順位付けも行われていない。だが序章の段階とはいえ、市は強いコミットメントをもってこれに取り組む予定であるため、そのポテンシャルは高い。
インドネシアでは、新たな法制化により天然資源関連の分野でビジネスを行う企業がCSRを行う必要がある。CSRの好例を2例紹介。1つ目は民間主導、2つ目は自治体主導だ。
1例目はパンカルピナン市の植物園の事例。州都である同市は、すずなどの天然資源が豊富で、5%の経済成長を続けている。だが、すずの採掘が貪欲に行われ、土壌汚染により植物の生育が悪くなったり、生物多様性が破壊される等の現象が起きている。そこで企業がCSRプロジェクトを開始。当初は世論の圧力によるものだったが、その後自治体の支援を得て活動が加速。最終的には、汚染された土地を植物園に転換して観光業にも寄与した。現在植物園には2000超の植物相、200超の動物相がいると見られている。その後、植物園と自治体で正式に覚書を交わし、プロジェクトが地に足をつけて推進している。これは企業が初めてCSR予算を環境プロジェクトに割り当てて、大成功を収めた国内でも画期的な一例である。
2例目は、バタム市の例。バタム市はその戦略的立地により、産業、観光、船舶貨物の港湾として発展してきた。市は、企業のCSR計画の中で持続可能な緑化で企業と自治体のパートナーシップの枠組みを作り、その中で、企業には緑ある快適な町づくりに参加する機会が提供されている。例えば、植物園のような公園を作ったり、その環境を改善したりする計画がある。このプログラムは現在計画段階で実際に正式な覚書等は締結されておらず、優先順位付けも行われていない。だが序章の段階とはいえ、市は強いコミットメントをもってこれに取り組む予定であるため、そのポテンシャルは高い。
◎ 「知多半島臨海部の企業緑地における生態系ネットワークの形成について」(愛知県、環境部自然環境課、課長 丹羽崇人)
人口740万人の愛知県は森林が42%を占め、大都市と多様な自然が共存している。愛知県は環境の保全と開発の調和を目指して「あいち方式」を作った。この方式の中で核となるのが「生物多様性ポテンシャルマップ」だ。生き物は移動するため、分断されると生命存続の危機に陥る。よって生息場所を意図的に緑や水辺でつなぐことで、これを再生する。開発済みの場所に環境配慮を重ねて生態系を回復するという発想だ。
だが土地には所有者がおり、所有の動機も目的もばらばらだ。所有する土地でどのような生き物を生かすかは各所有者の考えに委ねられるため、全体としてみると生態系が崩れてしまう。地域で土地所有者が認識を共通させることが必要になるため、そこで作成したのがポテンシャルマップである。例えばトンボがいる池や沼の位置から半径500メートル以内は、トンボの生息地である可能性がある。この圏内にある学校がビオトープを作るとしたら、トンボのビオトープがふさわしいことがこのマップからわかるようになっている。学校がトンボのビオトープを作ればトンボの生息地がつながるため、1+1が2ではなく、5にも6にも広がっていくのがマップの役割だ。
マップは、企業開発や公共工事の環境配慮などにも使える。現在はマップ上で県内を9の地域に分け、うち3つの地域をモデル地域として先行的に行っている。その一例が知多半島であり、知多半島生物多様性協議会を結成。メンバーは行政のほか、企業、大学、NPO団体など。沿岸部の埋立地に進出した大企業が10社あり、埋立地境界にはグリーンベルトがある。これは公害対策として作られたものなので、外来種や常緑樹が植えられた。これが50年ほど経過して良い森になってきたので、10社の協力を得て調査を行い、各社にカブトムシの棲む森づくりなどの提案書を出した。提案は各社の特性を見て、異なる提案を出した。ここから学生も巻き込んで「命をつなぐプロジェクト」を行い、10社がいっせいにグリーンベルトを公開するに至った。
従来は生物多様性というと、希少種に着目して開発を練っていたが、それに加えて生物多様性の総量を維持する方式で進めていくのがあいち方式だ。愛知県は、COP10を契機に海外の優れた事例も入ってくるようになり、それに触発されることも多い。
人口740万人の愛知県は森林が42%を占め、大都市と多様な自然が共存している。愛知県は環境の保全と開発の調和を目指して「あいち方式」を作った。この方式の中で核となるのが「生物多様性ポテンシャルマップ」だ。生き物は移動するため、分断されると生命存続の危機に陥る。よって生息場所を意図的に緑や水辺でつなぐことで、これを再生する。開発済みの場所に環境配慮を重ねて生態系を回復するという発想だ。
だが土地には所有者がおり、所有の動機も目的もばらばらだ。所有する土地でどのような生き物を生かすかは各所有者の考えに委ねられるため、全体としてみると生態系が崩れてしまう。地域で土地所有者が認識を共通させることが必要になるため、そこで作成したのがポテンシャルマップである。例えばトンボがいる池や沼の位置から半径500メートル以内は、トンボの生息地である可能性がある。この圏内にある学校がビオトープを作るとしたら、トンボのビオトープがふさわしいことがこのマップからわかるようになっている。学校がトンボのビオトープを作ればトンボの生息地がつながるため、1+1が2ではなく、5にも6にも広がっていくのがマップの役割だ。
マップは、企業開発や公共工事の環境配慮などにも使える。現在はマップ上で県内を9の地域に分け、うち3つの地域をモデル地域として先行的に行っている。その一例が知多半島であり、知多半島生物多様性協議会を結成。メンバーは行政のほか、企業、大学、NPO団体など。沿岸部の埋立地に進出した大企業が10社あり、埋立地境界にはグリーンベルトがある。これは公害対策として作られたものなので、外来種や常緑樹が植えられた。これが50年ほど経過して良い森になってきたので、10社の協力を得て調査を行い、各社にカブトムシの棲む森づくりなどの提案書を出した。提案は各社の特性を見て、異なる提案を出した。ここから学生も巻き込んで「命をつなぐプロジェクト」を行い、10社がいっせいにグリーンベルトを公開するに至った。
従来は生物多様性というと、希少種に着目して開発を練っていたが、それに加えて生物多様性の総量を維持する方式で進めていくのがあいち方式だ。愛知県は、COP10を契機に海外の優れた事例も入ってくるようになり、それに触発されることも多い。
パネルディスカッション

- ファシリテーター: ㈱博報堂 広報室CSRグループ部長 川廷昌弘
◎フィリピン・インドネシアの事例に対する質問
Q:法制度を作ることで企業が動き始めた事例だと思うが、企業はどのように資金拠出をしたのか。
A:企業の資金拠出の詳細までは調査対象ではなかったためわからない。一般的な自治体の話をすると、フィリピンでは自治体が資金拠出を行う際は、国を通すのが基本。だがそれを待っていたら時間がかかり過ぎるため、資材や必要物資の購入を含めて企業がそれを行う。
Q:それに対する市民の評価は?
A:サンフェルナンド市の場合、協議会に企業、行政のほか、一般市民が参加している。そこで利益や不都合な点について話し合った上で、最終的に合意に至るというプロセスがあるため、それにより一般市民も承諾したということになる。
Q:2つの事例の成功の要因は?
A:1つはステークホルダーが公式に意見を挙げられることだろう。問題を感じたときに協議会を通じて話し合いの場がもたれる。もう1つは実際に資金繰りや運営を管理する際、しっかりとしたプラットフォームがあること。以前は責任の所在等不明確だったが、協議会ができたことで、整合性をもってプロセスを進められるようになった。その他、市の発展計画と土地利用計画が発展していることが成功の要因だと考える。
Q:1つの企業なら動きやすい。だが自治体主導となると複数の企業に呼びかける必要があるため、プロセスが遅れるという認識であっているか。その場合、その理由は?
A:自治体で行うと複雑というわけではなく、今回紹介した事例(バタム市)はまだ始まったばかりなので成果を出すに至っていない。ここからは憶測だが、今回イクレイが行った調査によると、天然資源等の企業はCSRをやらなければならないという義務感、また、法的枠組みで企業に強制的にCSRをやらせるとコスト、利益、人員削減等の課題など抵抗もあるだろう。中には消極的な企業があるのも事実だろう。
◎愛知県に対する質問
Q:愛知県の例は法制化しているわけではないが、さまざまなセクターの協力を得てプロジェクトを推進している。かつ企業が10社あり、たった半年で同意を取り付けている。一見スムーズにいっているようだが実態は?
A:知多半島の事例ではさほど問題はなかった。他市で似たようなアイデアをやっているが、10年近くかかってもなかなか進んでいない一方、愛知は短い時間でできた。その要因の1つはポテンシャルマップというコミュニケーションツールがあったことだろう。さらに企業に一方的に押し付けるのではなく、各企業の緑化方法や個性を踏まえた提案をしたのが功を奏した。自治体からすると、企業がいれば税収が得られるが、その一方で24時間煙突から煙が出るなど環境負荷もある。だが、グリーンベルトをその目隠しにするのではなく、生き物の森に変える。印象的だったのは、メディアの取材がはいり、出光興産が、この森はもはや企業の私的な森ではなく、地域のコモンズとおっしゃっていたのが、何よりうれしかった。
◎まとめ
企業と自治体のパートナーシップにおいては、民間の自主性を引き出すことが大切だ。それにはマルチステークホルダーの協議会のようなプラットフォーム作りや、ポテンシャルマップのようなツール開発が鍵となるだろう。企業は利益が明確化され、それを自治体が指導する事例は秀逸。CSRを負担としないためにも、収益性を考えて行うのが企業としては大事。自然の力やポテンシャルを考慮すれば、災害に強い地域づくりにもつながる。
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ファシリテーターを務めた川廷氏によるブログはこちら。
Q:法制度を作ることで企業が動き始めた事例だと思うが、企業はどのように資金拠出をしたのか。
A:企業の資金拠出の詳細までは調査対象ではなかったためわからない。一般的な自治体の話をすると、フィリピンでは自治体が資金拠出を行う際は、国を通すのが基本。だがそれを待っていたら時間がかかり過ぎるため、資材や必要物資の購入を含めて企業がそれを行う。
Q:それに対する市民の評価は?
A:サンフェルナンド市の場合、協議会に企業、行政のほか、一般市民が参加している。そこで利益や不都合な点について話し合った上で、最終的に合意に至るというプロセスがあるため、それにより一般市民も承諾したということになる。
Q:2つの事例の成功の要因は?
A:1つはステークホルダーが公式に意見を挙げられることだろう。問題を感じたときに協議会を通じて話し合いの場がもたれる。もう1つは実際に資金繰りや運営を管理する際、しっかりとしたプラットフォームがあること。以前は責任の所在等不明確だったが、協議会ができたことで、整合性をもってプロセスを進められるようになった。その他、市の発展計画と土地利用計画が発展していることが成功の要因だと考える。
Q:1つの企業なら動きやすい。だが自治体主導となると複数の企業に呼びかける必要があるため、プロセスが遅れるという認識であっているか。その場合、その理由は?
A:自治体で行うと複雑というわけではなく、今回紹介した事例(バタム市)はまだ始まったばかりなので成果を出すに至っていない。ここからは憶測だが、今回イクレイが行った調査によると、天然資源等の企業はCSRをやらなければならないという義務感、また、法的枠組みで企業に強制的にCSRをやらせるとコスト、利益、人員削減等の課題など抵抗もあるだろう。中には消極的な企業があるのも事実だろう。
◎愛知県に対する質問
Q:愛知県の例は法制化しているわけではないが、さまざまなセクターの協力を得てプロジェクトを推進している。かつ企業が10社あり、たった半年で同意を取り付けている。一見スムーズにいっているようだが実態は?
A:知多半島の事例ではさほど問題はなかった。他市で似たようなアイデアをやっているが、10年近くかかってもなかなか進んでいない一方、愛知は短い時間でできた。その要因の1つはポテンシャルマップというコミュニケーションツールがあったことだろう。さらに企業に一方的に押し付けるのではなく、各企業の緑化方法や個性を踏まえた提案をしたのが功を奏した。自治体からすると、企業がいれば税収が得られるが、その一方で24時間煙突から煙が出るなど環境負荷もある。だが、グリーンベルトをその目隠しにするのではなく、生き物の森に変える。印象的だったのは、メディアの取材がはいり、出光興産が、この森はもはや企業の私的な森ではなく、地域のコモンズとおっしゃっていたのが、何よりうれしかった。
◎まとめ
企業と自治体のパートナーシップにおいては、民間の自主性を引き出すことが大切だ。それにはマルチステークホルダーの協議会のようなプラットフォーム作りや、ポテンシャルマップのようなツール開発が鍵となるだろう。企業は利益が明確化され、それを自治体が指導する事例は秀逸。CSRを負担としないためにも、収益性を考えて行うのが企業としては大事。自然の力やポテンシャルを考慮すれば、災害に強い地域づくりにもつながる。
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